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BRAIN 2013年第1号
12年12月17日発売
A4変型判
価格:本体¥2000+税
ISBNコード:978-4-287-85015-2
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特集疾患・手術方法から理解をつなげる!
    脳神経外科手術の合併症と術後ケア

企画編集/氏家 弘
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 脳神経外科手術の合併症は,脳神経外科医であればどのような達人であれ経験しています。手術合併症は,難しい手術であればあるほど,術前の患者の状態が悪ければ悪いほど,生じやすいです。また,脳腫瘍であれば全摘出にこだわればこだわるほど,術後の合併症の頻度は上がります。しかし全摘出できなければ必ず,再発という問題が残ります。これが脳動静脈奇形であれば,再発というより術後出血に繋がります。すなわち,脳腫瘍であれば全摘出が困難と考えれば亜全摘出や部分摘出も可能ですが,血管系の手術の場合は部分摘出術のような手術はありえません。たとえば,脳動脈瘤の部分クリッピングは再破裂を招きますし,STA-MCA anastomosisのようなバイパス術を途中でやめれば,血流が流れず手術によってかえって脳梗塞という事態を招きます。このように,腫瘍と血管系では手術方針が違ってきます。
 しかし,共通点もあります。手術操作の過程には,病巣に到達するために生体組織を切り開くという外傷が必須です。生体を切り開き患部に到達するために,多くの動静脈を凝固切離しなくてはなりません。この切離された動脈から術後出血をするというパターンが,両者に共通で最も恐れる合併症です。脳腫瘍や脳動静脈奇形で周囲の脆弱な血管を残す場合,術中にヘパリンを使用しなければならない場合は,術後の血圧管理が術後出血の発症を左右します。
 多くの脳神経外科の施設で最も扱われる疾患は,脳血管障害と脳腫瘍です。脳血管障害の手術には,出血性病変に対しては脳内血腫摘出術,脳動脈瘤クリッピング術,脳動静脈奇形摘出術,閉塞性病変に対してはバイパス術,頚動脈内膜剥離術があります。脳腫瘍の手術は,髄膜腫,グリオーマ,下垂体腫瘍,聴神経腫瘍に対するもので,ほぼ90%を占めます。これらの手術には,術後出血という共通の合併症以外に,その疾患,部位そしてアプローチに付随した特有な合併症の危険性があります。また,バイパス術では血圧を下げすぎることは閉塞の危険性がありますし,高血圧性脳内出血では術後の血圧上昇で再出血を招き,脳腫瘍では残存腫瘍があれば腫瘍内の脆弱な血管からの術後出血の危険性があります。どのような疾患にどのような手術をしたかということを十分に知っていないと,術後管理は怖くてできたものではありません。
 この特集号では手術合併症に焦点を合わせ,疾患の持つ特有性と手術方法を紹介し,なぜそのような合併症が生じるかを理解できるように,各講師の先生に執筆していただきました。現代では術後に新たな神経脱落症状が出た場合,訴訟になるケースも少なくありません。各施設で安全な手術ができる範囲を,常に広げていく努力が必要です。
氏家 弘
(独立行政法人 労働者健康福祉機構 東京労災病院 脳神経外科部長)
特集
1. 頚動脈内膜剥離術/杉山達也,水谷 徹
2. 髄膜腫の手術/原田直幸,周郷延雄
3. グリオーマの手術-覚醒下手術-/秋元治朗
4. 脳動脈瘤コイル塞栓術/比嘉 隆
5. くも膜下出血の手術/加藤宏一
6. 転移性脳腫瘍の手術-開頭術かガンマナイフか-/中谷幸太郎
7. 脳動静脈奇形の手術/中川将徳,氏家 弘
8. 経蝶形骨下垂体手術/氏家 弘
9. 脳神経外科術後・看護総論/石阪 香
10. 脳神経外科術後・摂食嚥下障害看護のポイント/金澤典子
11. 急性期のリハビリテーション/今関早苗
12. 看護に役立つMSWの知識/田中志保

連載
・ニューロナースの疑問に答える! 脳神経疾患画像診断レクチャー
 第13回 単純ヘルペス脳炎/クロイツフェルト・ヤコブ病
 執筆●藤川 章 企画●土屋一洋
・エッセイ●こころとからだ
 第8回 スーチー&マンデラ
 内田 都