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BRAIN 2012年10月号
12年10月1日発売
A4変型判
価格:本体¥2000+税
ISBNコード:978-4-287-85014-5
全ページカラー印刷

特集廃用症候群を正しく理解しよう!
   〜廃用症候群とは何か? なぜ起こるのか?
    正しい予防と正しい改善方法は?〜

企画編集/八幡徹太郎
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 「廃用症候群」。今や大変聞き慣れた言葉となりました。どんな状態を指すのか,医療従事者ならだれでも頭のなかに「イメージ」ができ上がっていると思います。しかし,廃用症候群の「定義」を答えろと言われた場合,正しくこれを答えられる人はどれだけいるでしょうか。
 今でこそ,入院患者の「早期離床」は常識ですが,10数年前までは,入院したら「とりあえず,しばらく安静」。落ち着くまで,判明するまで,診断がつくまでは安静が普通でした。「とりあえず安静」が「医学的常識」との認識まではなかったにせよ,この初期対処は疑う余地のない正しい指示であり,恒例であり,現場に深く根づき覆えすことの難しい認識でした。もし,早期から身体を起こしたり,立ったり,歩いたりして経過中に予期せぬことが起これば,「安静にしていなかった」ことが真っ先に非難されました。患者・家族の認識さえそうでした。とはいえ,しかしなぜ「安静臥床」が優先されるのか,その明確な根拠や理由は学問的にも曖昧でした。
 時代は変わりました。入院患者の高齢化が進み,高齢入院者を中心とした「安静臥床の弊害」が大変な勢いで顕在化してきました。「安静臥床」を1つの治療手段として真摯にも緻密にも考えず,あれもこれも「安静臥床」と指示してきた,安静神話の行きすぎが,この結果をもたらしました。社会問題にもなり,ここ10年,ようやく現場の認識が「安静臥床」から「早期離床」に大きく逆転しようとしています。「廃用症候群」という用語は,この根深い現場認識の大変革を推進してきた頼もしいキャンペーン用語でもあったと考えられます。「安静臥床はダメです」という頭ごなしの命令調の現場教育ではなく,「廃用を予防」するため,と明確な根拠・理由の説明が加えられたからこそ,多くの現場人は早期離床の重要性を新たに認識できるようになったのではないでしょうか?
 過去の誤ちを正した「廃用症候群」。この頼もしい用語あるいは概念は今,現場ではどう捉えられているでしょうか? 臥床に陥った,ADLが低下した・・・いずれも的を外してはいません。しかし,ADLが低下したら,これらはすべて廃用症候群でしょうか? 今,現場では「廃用症候群」という用語の濫用・過用・誤用が目立ちます。つまり,過去の誤ちを正した「廃用症候群」が今は危ういのです。安易な診断は,それに続く治療,「早期離床」にも影響を及ぼします。「質の高い正しい早期離床」を提供するには,現場における廃用症候群の正しい理解が望まれます。
 廃用症候群は,学問的には多彩な症状・状態を網羅していますが,臨床は学問とは違います。現場ではいつもそのすべてが問題となるわけではありません。さて,「廃用」という幅広い症候群のなかで,私たちはいつもどんな症状を問題視しているでしょうか? 今月号の特集ではまず「学問的な廃用症候群」に少し触れ,そのなかで私たち臨床家が留意すべきもの,つまり「臨床的な廃用症候群」を抽出できるよう心掛けました。まずは,曖昧に「イメージで認識している」ことから脱却しましょう。本特集はそのお手伝いをいたします。
八幡徹太郎
(金沢大学附属病院 リハビリテーション部 部長・病院臨床教授・整形外科 講師)
特集
1. 概要〜廃用症候群とはどのようなものだろうか? 出口清喜
2. phaseごとにみた廃用症候群(1)急性期 石黒幸治
3. phaseごとにみた廃用症候群(2)回復期 後藤伸介
4. phaseごとにみた廃用症候群(3)生活期(維持期) 北谷正浩
5-1. PTからみた廃用症候群:運動機能面(体力・筋力など)の廃用 椿 淳裕
5-2. PTからみた廃用症候群:具体例の紹介 吉田信也
6-1. OTからみた廃用症候群:精神機能面の廃用 塩田繁人
6-2. OTからみた廃用症候群:具体例の紹介 堀江 翔
7-2. STからみた廃用症候群:具体例の紹介 沖田浩一
7-1. STからみた廃用症候群:発話機能・摂食嚥下機能面の廃用 福永真哉

連載
・ニューロナースの疑問に答える! 脳神経疾患画像診断レクチャー
 第12回 髄膜炎/脳膿瘍
 執筆●藤川 章 企画●土屋一洋
・エッセイ●こころとからだ
 第7回 立ち直り力
 内田 都
・主要症例で学ぶ ナースが知りたい! 脳神経外科疾患の病態・治療・術後ケア
 第14回 髄膜腫
 執筆●松尾孝之 企画●林 健太郎