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BRAIN 2012年3月号 SOLD OUT
12年2月15日発売
A4変型判
価格:本体¥2000+税
ISBNコード:978-4-287-85007-7
全ページカラー印刷

特集脳神経疾患の理解がもっと深まる! 画像の読み方のツボ

企画編集/久保道也
画像をクリックするとサンプル(PDF)をご覧いただけます
目次 特集 連載 連載
 チーム医療を推進している病院では,毎朝行っている多職種カンファレンスで,一緒に画像を見て情報共有を行っている場合が少なくありません。私たちの病院でも,開始した当初は「あまり自分には関係ない」「どうせ見てもよくわからない」という意識からか,なかなか画像に視線が集まりませんでした。脳卒中センター開設5年目に入った現在,画像に全員の視線が集って,自然に身を乗り出してくる様子に,チーム力の高まりを実感するようになりました。
 画像の読み方にはツボがあります。ツボをしっかり押さえることによって,外観からは知り得ない頭蓋内に起こった出来事をおおよそ把握することができます。その結果,これから起こりうる危険な状況に準備を整えたり,自信を持って安心して接したりすることができます。「わかる喜び」は自信につながり,きっと「もっと知りたい」と思うようになるでしょう。
 今回は,日ごろの脳神経看護の現場で比較的多く出会う疾患を,その状況を想定して大切と思われる画像に絞って,取り上げたいと思います。
 最もよい例が急性期脳梗塞の現場です。
 2005年より,血栓を溶解するt-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子:アルテプラーゼ)静注療法が日本でも認可され,最近は血栓を回収して再開通を試みる新しいカテーテル治療(Merciリトリーバーなど)も行われるようになりました。しかし,治療方法やデバイス(道具や材料)がいくら発達しても,治療の原則が変わったわけではありません。不可逆的な虚血状態に陥った脳への血流再開は,症状の改善どころか出血を起こして致命的にすらなりかねません。血栓回収カテーテルなどを使用するのは,まだ脳が可逆的な状態にもかかわらず,t-PA静注療法の適応となる3時間を超えてしまった場合や,他の条件においてわずかに適応から外れてしまった場合に限られます。仮に,t-PA静注療法の適応の時間制限が現在の3時間よりもっと長くなったとしても,治療の対象は可逆的な状態の脳に限られるという点においてはまったく変わりません。
 したがって,虚血に陥った脳が可逆性な状態にあるかどうかをいかにして見きわめるかが重要になってきます。
 となると,発症から2時間なのになぜt-PA静注療法を行わなかったのか,あるいは発症から4時間経っているのになぜ血栓回収カテーテル治療(Merciリトリーバー)を行ったのか……主治医はどの画像を決め手にして判断したのか,皆さんも知りたいとは思いませんか? もちろん答えは,早期CTサイン(early CT sign)やMRIの拡散強調画像(ディフュージョン:diffusion weighted image)での高信号域ですが(よく「光っている」という表現を使います),それではこれらがどの程度までの広がりであれば積極的に血行再建を行うのでしょうか? その評価に重要となるのは,ASPECTSスコアです。画像のツボの意味が少しずつおわかりいただけたのではないでしょうか?
 画像の読み方のツボをマスターすることによって,皆さんの病院でも「チーム力」そのものがますます高まることを心から願ってやみません。
久保道也
(富山県済生会富山病院 脳卒中センター 部長・脳神経外科 部長)
特集
1. 急性期脳梗塞における早期CTサイン(early CT sign)とASPECTSスコア/堀 恵美子
2. 急性期脳卒中に有用なMRI画像:DWI(脳梗塞),T2*(脳微小出血),FLAIR(くも膜下出血)/尾崎 聡
3. 慢性期脳虚血:血行再建適応評価のための脳血流SPECT検査/秋岡直樹
4. MRAと3次元CTAを用いた脳血管評価/松田 謙
5. 頸動脈エコー:血流速度とプラーク性状評価の重要性/古井英介
6. MRIによるプラーク性状評価/山田清文
7. 頭部外傷における画像診断のツボ/大橋洋輝・谷  諭
8. 認知症における画像評価/松田博史
9. 脳腫瘍の画像診断の重要ポイント/永井正一
10. 小児脳神経疾患の画像とその特徴/赤井卓也
11. 脊髄脊椎の画像診断の重要ポイント/飯田隆昭

連載
・ニューロナースの疑問に答える! 脳神経疾患画像診断レクチャー
  第5回 もやもや病/五明美穂・土屋一洋 企画●土屋一洋
・エッセイ●笑顔と脳 第7回 くすぐり笑い/内田 都
・主要症例で学ぶ ナースが知りたい! 脳神経外科疾患の病態・治療・術後ケア
  第7回 もやもや病に対する血行再建術/堀江信貴 企画●林 健太郎

その他
・学会レポート「第38回 日本脳神経看護研究学会」