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WOC Nursing 19年6月号
A4変型判
2019年6月発行
価格:本体2,400円+税
ISBNコード:978-4-287-73067-6
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特集熱傷,瘢痕,ケロイド治療・ケアを知る
企画編集/川上重彦(学校法人金沢医科大学 理事・名誉教授,日本褥瘡学会 理事長)
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 先般,熱傷を受傷した乳児の創部を食品用ラップで巻いて長期間放置した,として母親が逮捕された事件がありました。熱傷創を食品用ラップで被覆するという治療法はインターネットを介して広がった方法です。食品用ラップで熱傷創を被覆して創を湿潤状態にしておけば熱傷創はすべて自然に治癒し手術は必要ない,という誤った情報が独り歩きした結果,重篤な敗血症を生じたり,著しい関節機能障害を残したりなど,適切な治療を受けていれば本来避けえた合併症,後遺症を生じた例が問題となりました。日本熱傷学会では,2012年に「熱傷創治療に食品用ラップを用いてはならない」との見解を発表しています。
 「熱傷」は皮膚の小範囲に発赤や水疱が生じた後,数日で治癒に至るものから,広範囲に皮膚全層に熱障害が及び致死的な状態となるもの,小範囲ながら適切な治療が施されなければ著しい関節機能障害を残すものまで,さまざまな病態がみられる急性創傷です。病態がバリエーションに富む原因としては,受傷の原因(高温の液体・気体・個体,化学物質,雷撃,電撃),受傷場所(屋内か屋外か),受傷者の年齢,などが挙げられます。熱傷治療に関わる医師はこれらの病態を理解して,状況に応じた治療を選択する必要があります。
 では,熱傷の治療は医師だけが行うものでしょうか。重症の熱傷であれば,受傷現場における救急処置から治療施設への搬送,集中治療室,回復期における看護ケア,関節拘縮に対するリハビリテーション,創感染に対する適切な抗菌薬の選択,など多職種によるチーム医療が求められています。また,熱傷創治癒後に生じる肥厚性瘢痕,瘢痕拘縮,そして瘢痕治癒後の特殊な病態であるケロイドの治療やケアも患者の社会復帰にとっては欠かすことはできません。
 創傷に関わる看護師(WOCナース)は,これまでは主に褥瘡や下腿潰瘍などの慢性創傷の治療,ケアに従事してきました。しかしながら,今後は熱傷のような急性創傷の治療やケアへの関与も求められてくると考えられます。たとえば,大規模火災が発生した場合などは,熱傷専門医に加えて,WOC ナースの関与も求められると思われます。多数の熱傷患者が発生した災害として記憶に新しいところでは,2013年 福知山花火大会におけるガソリン爆発事故(59名受傷,うち3名死亡),2015年 台湾におけるカラーパウダー爆発事故(525名受傷,うち15名死亡)などがあります。来年は東京でオリンピック・パラリンピックが開催され,多くの人々が東京近辺に集まります。日本熱傷学会では,不測の事態に備えて,本大会に向けての救急・災害医療体制の構築に関する調査・研究(厚生労働省特別研究事業)を行い,現状と対策を冊子として発行しています。
 本特集を読まれて,「熱傷」という急性創傷の病態と,受傷現場の応急処置から社会復帰までの治療の流れを理解していただき,今後の活動の一助となれば幸いです。

川上重彦
学校法人金沢医科大学 理事・名誉教授,日本褥瘡学会 理事長


1. 熱傷とは/仲沢弘明
2. 熱傷の診断,重症度の判定/松村 一
3. 熱傷の応急処置/熊川靖章,田中 裕,森川美樹
4. 熱傷による全身性変化とその治療/池田弘人
5. 熱傷創の局所治療/岸邊美幸
6. 熱傷の合併症/鳴海篤志
7. 乳幼児・高齢者熱傷の特徴と治療/長谷川祐基,櫻井裕之
8. 熱傷のチーム医療/鈴木将平,増澤佑哉,佐々木淳一
9. 肥厚性瘢痕,ケロイドの形成過程と治療/安田 浩
10. 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての救急・災害医療体制の構築/織田 順