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月刊糖尿病 146号
月刊糖尿病147号(Vol.14 No.7 2022)

A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-82144-2

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特集●肥満・糖尿病・歯周病

企画編集/西村英紀

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 肥満や糖尿病は歯周病の増悪因子となることから歯周病は糖尿病の6番目の合併症と位置付けられ,その上流には高血糖や肥満に伴う高サイトカイン(アディポカイン)血症が存在すると考えられてきました.また,こうして重症化した歯周病が,軽微な慢性炎症としてインスリン抵抗性の進行促進要因となりえることも明らかになっています.
 近年,これらに加えインスリン抵抗性そのものが歯周病の増悪因子として作用する可能性が指摘されています.いうまでもなくインスリン抵抗性の最大の危険因子は肥満です.これらから,肥満・糖尿病やその合併症である歯周病の我が国における頻度を整理し,さらに肥満・糖尿病と歯周病の相互作用を分子レベルで正確に把握する必要があります.重症化した歯周病は菌血症や腸内細菌叢のかく乱,あるいは循環免疫細胞の活性化を介して,NASHやエネルギー代謝にも影響を与えると考えられています.これらから重症化した歯周病が遠隔臓器障害や腸内細菌叢へ与える影響,ひいては脂質代謝や肥満そのものに及ぼす影響についても理解しておく必要があります.これらを把握したうえで,分子基盤に基づいた分子標的療法の確立が望まれます.また,基本的な食事・運動療法を徹底するうえでも,分子基盤の理解はモチベーションの向上に資するのみでなく,治療効果をも左右することから必須の要件です.一方近年では,高齢者糖尿病が増加しつつあるものの,高齢者糖尿病と口腔の健康の関連性についてはほとんどわかっていません.超高齢社会をむかえる今日,この関連性を整理しておくことは非常に重要です.さらにこれらの関連性を理解したうえで,地域において医科歯科双方のかかりつけ医ならびにパラスタッフを交えたチームによる情報の共有は,肥満・糖尿病の管理の一環として必須です.厚生労働省による糖尿病性腎症重症化予防プログラムのなかでも,効果的な医科歯科連携システムの構築は,かかりつけ医と専門医の連携と並んで重要な評価対象の1つになっています.
 以上から,本特集では肥満・糖尿病と歯周病の最新の疫学,歯周病細菌や炎症の他臓器や組織への波及と遠隔臓器障害への影響,およびそれらを結び付ける分子間相互作用,治療標的の可能性のある薬剤,高齢者糖尿病と口腔の健康,そして医科歯科連携の実際と実践について,特集としてまとめてみました.すべての項目を網羅していることから,特集を通して読むことで,肥満・糖尿病と歯周病の関連性の理解が一層深まるものと確信しております.

西村英紀
(九州大学 歯学研究院 口腔機能修復学講座 歯周病学分野 教授)

1.大規模データに基づく糖尿病と歯周病/森野勝太郎,宮澤伊都子,前川聡
2.肥満と歯周病の分子疫学/竹下 徹,山下喜久
3.歯周病細菌由来菌血症による遠隔臓器への影響/今井千尋,大杉勇人,片桐さやか
4.歯周病感染による腸内細菌巣の攪乱と全身への影響/山崎和久,山崎恭子
5.歯周病局所におけるインスリン抵抗性〜インスリン抵抗性の新たな展開
  /水谷幸嗣,中川佳太,竹村 修,小湊広美
6.インスリン抵抗性と歯周炎〜新たな分子基盤/新城尊徳
7.CCL19/CCR7シグナルによる微細炎症とエネルギー代謝/岩下未咲
8.歯周炎とNAFLD/NASH/倉治竜太郎,沼部幸博
9.インクレチン制御薬による歯周病への影響/中村信久,成瀬桂子
10.高齢者糖尿病と口腔の健康/四釜洋介,松下健二
11.歯周病と糖尿病の医科歯科連携/赤司朋之