
特集●WOCナースが知っておきたい皮膚・軟部組織感染症
| 企画編集 | :浅田秀夫 |
|---|---|
| 発行 | :2025年10月 |
| 判型 | :A4変型 |
| 頁数 | :80 |
| ISBN | :978-4-287-73121-5 |
| 定価 | :2,640円(本体2,400円+税10%) |
特集にあたって
皮膚・軟部組織感染症は,創傷ケアやストーマ・スキンケアに携わるWOCナースが日常の臨床で頻繁に直面する,きわめて重要な疾患群です。とくに高齢者や免疫力の低下した患者では,わずかな皮膚病変が急速に悪化し,ときに生命を脅かすこともあります。したがって,早期に変化を捉え,適切に対応できる観察力と判断力が,WOCナースには求められます。
皮膚・軟部組織感染症の管理は,単なる創部処置にとどまらず,患者の生活の質(QOL)にも深くかかわります。感染リスクをどのように評価し,どの段階で医師や他職種に連携を図るのか。さらに,抗菌薬の処方意図を理解し,その効果や副作用を見きわめるために患者の状態を的確に観察・報告することも重要です。こうした視点は,感染管理における多職種連携のなかでWOCナースの専門性を最も発揮できる領域です。加えて,耐性菌の出現が大きな課題となる現代医療において,抗菌薬の適正使用を理解し実践することは,すべての医療従事者に求められる姿勢といえるでしょう。
ここで忘れてはならないのが,感染予防対策の基本です。手指衛生や手袋の正しい使用は,最も基本的でありながら,感染拡大を防ぐうえで最も確実な方法です。さらに,器材や環境管理では「洗浄を基本」とし,状況に応じて適切な消毒薬を選択できる判断が欠かせません。創傷の丁寧なアセスメントも感染対策の出発点であり,ナース自身の観察眼が感染制御の一翼を担っています。そして,これらを個人の努力にとどめず,医師・薬剤師・感染管理認定看護師などと連携し,チーム全体で情報を共有しながら実践することこそ,患者を守る最大の力となります。
こうした実践を踏まえつつ感染症の理解をさらに深めるために,本特集では,伝染性膿痂疹や蜂窩織炎,壊死性筋膜炎といった代表的な細菌感染症をはじめ,白癬,カンジダ症,マラセチア感染症などの真菌感染症,帯状疱疹や単純ヘルペス,尋常性疣贅といったウイルス感染症まで幅広く取り上げています。さらに,院内や高齢者施設での集団発生が問題となる疥癬についても解説し,感染経路の理解と実践的な対応策を紹介しました。いずれもWOCナースが臨床で遭遇する可能性が高く,日々の観察やケアに直結する内容です。各疾患の解説では,代表的な臨床写真を提示しつつ,特徴的な症状,診断のポイント,治療や管理の実際について,各分野の専門家に最新の知見をわかりやすくまとめていただきました。また,抗菌薬の分類や作用機序,耐性菌の動向に加え,感染管理のエッセンスも整理されており,日常業務のなかで直面する疑問に応えられる構成となっています。
本特集が,WOCナースの感染症に対する理解を一層深め,日々の臨床判断やケアの質向上に役立つことを願っています。そして,患者に寄り添い,より安全で質の高いケアを提供するための手がかりとして,多くの皆さまにご活用いただければ幸いです。
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