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WOC Nursing 22年2月号
A4変型判
2022年5月発行
定価2,640円(本体2,400円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-73099-7
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特集ストーマ造設から看取りまで:オストメイトを支える多職種連携
企画編集/佐藤文恵(有限会社きちっと 代表/医療法人社団 松愛会 松田病院 ストーマ排便ケア担当)
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 30数年前,筆者は海外から帰国したばかりのETナースと出会い,以来,患者会・ピア活動,在宅や施設スタッフへの学習会など,ストーマケアや排泄に関わるさまざまな活動に関わり,最近は【排せつの地域助け合いコンチネンス・サロン】でお助けサポーター活動も行っています。
 2000年に介護保険制度が始まり,「要介護状態となった者の尊厳を保持し,その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう,必要な保健医療・福祉サービスを国民の共同連帯の理念に基づいて行う」(介護保険法第1条)とされ,多くのサロン活動は住民主体のサービスです。2015年版の地域包括ケアシステムの植木鉢は「本人の選択と本人・家族の心構え」へと進化し,2018年には『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』(4月),『認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン』(6月)など,さまざまなガイドラインも発出されています。
 日本国憲法で「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(第25条)」,個人として尊重され(第13条),ひとしく教育を受ける権利(第26条),勤労の権利と義務(第27条)も謳われています。しかしながら排泄へのタブー視を世の中から根絶することは簡単ではなく,無力感を感じます。
 新型コロナウイルス感染症は,国民皆保険制度のわが国においても,通常の医療提供が困難な状況をもたらし,30数年の長い付き合いのオストメイトが急逝し寂しさが募ります。自粛と面会制限のなかで改めて日常を振り返り,自らを問い直し,再構築,ニューノーマルへの変革が迫られます。オストメイトをはじめ排泄障害をもつ人たちの生きづらくきびしい社会から,未来へ向けてどう変革ができるのでしょう。
 感染対策によるコミュニケーションの不足,医師の説明に対する理解不十分から治療の拒否,民間療法への心酔など,通常でない医療の長期化が遺した影響は深刻です。排泄障害は虐待・ネグレクト要因となりやすく「生命危機に直結しない」との理由で緊急時訪問看護が機能しない事業所など,地域は問題が山積みです。排泄専門外来で出会った「乳幼児期にストーマで過ごしたことを本人は知らされず,30数年経過し便失禁で相談に来院した例」は排泄のタブーが放置され,尊厳を脅かしたまま,周産期・高度医療の現場は進化・革新し,取り残されたまま現在に至る人々の存在に気づかされ衝撃的でした。
 地域では,在宅医療を希望する終末期ケアマネジメントが急増しています。医療・看護の切れ目のないサポートは,利用者の日常生活と心の安寧に必要不可欠です。
 【だれもがこの世に産まれ,育ち,共に学び,役割を果たし,晩年まで自分らしく過ごし生涯をまっとうする。】個々人のライフステージの全体像を俯瞰して,人生のどの時期・期間,どのような多様なメンバーが多職種連携することが重要か。各々の立ち位置から寄り添い,ACP意思決定支援チームの一員としての役割にも期待します。

佐藤文恵
有限会社きちっと 代表/医療法人社団 松愛会 松田病院 ストーマ排便ケア担当
1. “だれにもやさしい”,術前ストーマオリエンテーション/水島史乃
2. 退院後の個々のくらしを見据えた,オストメイトへのセルフケア支援/奈木志津子
3. おとなも子どもも赤ちゃんも。オストメイトに役立つ制度・資源や情報/鈴木友彰
4. 退院後の生活と成長を見据えた小児ストーマケアと家族支援/中村雅恵
5. 外来から在宅へ 切れ目のない看護の連携を考える/竹内涼子
6. 患者会の変遷とこれからの活動における課題/増井 均
7. オストメイト支援における企業の社会的責任と地域貢献のありかた/山本由美子
8. 直腸がんに対する低位前方切除術・ストーマ閉鎖術後の排便機能障害へのアプローチ/新屋善朗
9. 地域のナースをつなぐ学びの場:静岡県西部地区ストーマリハビリテーション講習会の役割/金子早苗,春田純香
10. 尊厳ある生涯を支える連携とは〜排せつの地域助け合いサロンの支援から〜/佐藤文恵