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WOC Nursing 19年12月号
A4変型判
2019年12月発行
定価2,640円(本体2,400円+税10%)ISBNコード:978-4-287-73073-7
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特集実践!リンパ浮腫のケア
企画編集/
重松 宏(都庁前血管外科・循環器内科 院長/日本リンパ浮腫治療学会 名誉理事長)
松原 忍(東京品川病院 むくみの外来,日本リンパ浮腫治療学会 理事)
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 「リンパ浮腫」ががん治療の後遺症として認識されるようになり,治療に必要な弾性着衣の療養費払いや複合的治療の保険診療などが一部で認められるようになりました。しかし,その治療に携わる私たち医療従事者の知識はまだ十分とはいえません。分厚い教科書をめくっても「リンパ浮腫」に関する説明は1ページにも満たず,浮腫全体を合わせても数ページに紙面が割かれている程度のことがあります。
 そのような状況で「なんとか困っている患者の助けになりたい」と試行錯誤している仲間もたくさんいらして,ご自身で講習会に参加されたり関連する本で勉強されたりしています。とくに,本誌をご覧の皆さんは皮膚・排泄ケア認定看護師をすでに取得している方,これから目指そうとしている方が多く,必要とされる専門知識が類似しているので,「リンパ浮腫」はより身近な疾患であろうと思います。
 がんの治療後のむくみを主治医に相談しても「治る病気ではないからどうしようもない」と言われ,諦めて治療の機会を逸してしまう患者もいます。リンパ浮腫に関するホームページに載っているひどい重症例の写真を見て,自分も同じようになると思い込み「リンパ浮腫になるぐらいなら,がんで死んだほうがよかった」と悲観する方もいます。また,高齢者が廃用性浮腫や静脈性浮腫などによる「下肢のむくみ」のために受診することもよくみられるようになりました。原因は異なりますが,むくみのため日常生活がつらいことに変わりはありません。
 本特集では「浮腫のケアをしてあげたいけれど,どこからどう取りかかればよいのか見当がつかない」「距離や時間,人員数などの問題で,専門施設で本格的に学ぶことが難しい」と悩む医療従事者が「これなら自分にもできるかも!」と思える,実臨床に即した内容をまとめています。リンパ浮腫の一般的な概要・診断・治療法はもとより,患者を全人的に支援するためのメンタルケアや緩和ケアの項目を設けました。また,原発性リンパ浮腫の治療が小児慢性特定疾病として助成されるようになりましたので,成人とは異なる診療やケアを学びます。近年広まりつつある在宅医療の現場では下肢浮腫に遭遇することがよくあります。そのケアを知ることで,皆さんの今後の取り組みの一助になればと考えています。
 これまでリンパ管は見えないものとされ,先人たちの経験をもとに治療やケアが進められてきました。しかし,最近では放射線科を中心にリンパ系組織に興味を示す医師が増え,MRIや直接造影法などによる画像評価を劇的に発展させています。解剖学的構造やリンパ管の性状が鮮明にわかるようになり,新たなアプローチも検討できる時代となりました。限られた誌面ですが,そんな話題も盛り込んでいます。
 本特集が明日からの皆さんのお仕事に,少しでも役立つことができれば光栄です。

重松 宏
都庁前血管外科・循環器内科 院長/日本リンパ浮腫治療学会 名誉理事長

松原 忍
東京品川病院 むくみの外来,日本リンパ浮腫治療学会 理事


1. 総論/小川佳宏
2. 保険適用の現状−指導管理料,療養費支給,複合的治療料,小児慢性特定疾病医療費助成制度,リンパシンチ−/新井恒紀
3. リンパ浮腫の診断−臨床診断と画像評価による機能診断−/松原 忍
4. 日常生活上のスキンケア/塚越みどり
5. 用手的リンパドレナージ(manual lymph drainage;MLD)の基礎知識/大前敬子
6. 症状に応じた圧迫療法の工夫−症状のアセスメントから圧迫療法の実施とその評価について−/高西裕子
7. リンパ浮腫に対する運動療法の目的とポイント/山本優一
8. 外科治療/秋田新介,三川信之
9. リンパ浮腫患者(サバイバー)の心理的側面に配慮したアプローチ/田尻寿子
10. 小児のリンパ浮腫/加藤 基
11. 緩和ケアにおける浮腫/井沢知子
12. 在宅医療における浮腫/奥 朋子
トピックス:放射線科医によるリンパ管評価−リンパ管の画像診断とIVR(画像ガイド下治療)−/曽我茂義