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WOC Nursing 16年1月号 SOLD OUT
A4変型判
価格:本体2,000円+税
ISBNコード:978-4-287-73028-7
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特集排尿障害とその対処への実践
企画編集/後藤百万
(名古屋大学大学院 医学系研究科 病態外科学講座 泌尿器科学 教授)
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 排尿障害は尿排出障害と蓄尿障害に分けられ,さまざまな症候を呈します。2013 年に行われた日本での排尿障害に関する疫学調査では,排尿障害の罹患率がきわめて高いことが報告され,とくに60 歳以上の78%が何らかの排尿障害による症状を有することが示されています。
 たとえば,夜間頻尿の罹患者は4500 万人,昼間頻尿の罹患者は3300 万人ときわめて多く,また尿失禁については,現在の罹患者は約600 万人,10 年後には1000 万人に達すると推計されています。近年の排尿障害に対する診断・治療の進歩や啓発により,排尿障害以外はおおよそ健康であり,通院可能な患者では,本人が希望すれば専門的な検査・治療の機会を得ることは容易で,良好な治療効果が得られます。しかし,老人施設入所,あるいは被在宅看護高齢者については,排尿障害の頻度は高いにもかかわらず,十分な評価や治療を受ける機会が得られず,安易なおむつ使用や尿道カテーテル留置を受けている場合が少なくありません。排尿障害は,生命に直接かかわることはないものの,人間の尊厳やQOL を障害するため,適切に対処されるべき問題です。また,高齢者の排尿障害は,介護負担を増加させ,生活の質を阻害し,介護放棄にもつながる問題となっています。不適切な排尿管理は,寝たきり状態や認知症の助長,治療機会の喪失につながりますが,逆に積極的な排泄ケアは生活の質の改善,心身機能の改善をもたらし,介護予防につながる排泄リハビリテーションとして位置づけられます。
 医療の現場に目を向けたとき,適切な排尿管理が行われているでしょうか。愛知県および全国で行われた老人施設,訪問看護センター,病院での排尿管理実態調査では,多くの患者や高齢者がカテーテル留置やおむつを使用されているものの,その理由は必ずしも適切ではなく,その約30 〜40%は取り外しが可能で,排尿管理が不十分であることが示唆されています。排尿障害は,小児から高齢者まで広い年代にみられ,またその原因は多岐にわたり,まさに人間の尊厳にかかわる排尿障害の改善は,医療におけるQOL の重要性が問われる現在,喫緊の課題です。
 適切な排尿管理を行うためには,下部尿路機能障害の病態,身体運動機能,認知機能,環境要因を含めた,排尿障害にかかわる要因のアセスメントを正しく行い,適切な対処を実践することが求められます。本特集では,排尿障害の病態・症候からアセスメント,看護師の行う対処や医師の行う治療まで,各領域のエキスパートに実践的内容で執筆していただくようお願いしました。WOC ナースは,医療の現場において,適切な排泄管理の実践のみならず,教育にも重要な役割を果たすものと思いますが,本特集が皆さんの一助になれば幸いです。
後藤百万
名古屋大学大学院 医学系研究科 病態外科学講座 泌尿器科学 教授
1章
2章
3章
4章
5章
6章
7章
8章
9章
10章
11章
12章
尿排出障害の病態と症候/鈴木康之
蓄尿障害の病態と症候/森 健一
看護師が行う排尿機能のアセスメント/谷口珠実
専門医による下部尿路機能評価/小川輝之
高齢者ケアにおける排尿管理の役割/後藤百万
排尿障害とQOL/吉田正貴
おむつによる排尿ケアの基本/渡邉順子
尿道留置カテーテル離脱への道筋/川口寛介,佐藤和佳子
排尿障害に対する行動療法/江本厚子
清潔間歇導尿(CIC)による排尿管理/田中純子
排尿障害に対する薬物治療の基本/澤田智史
排尿障害に対する外科的治療/北 雅史,柿崎秀宏