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月刊糖尿病 146号
月刊糖尿病146号(Vol.14 No.6 2022)

A4変型判/80頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-82143-5

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特集●最新!糖尿病網膜症

企画編集/鈴間 潔

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 日本眼科学会から『糖尿病網膜症診療ガイドライン』が公開され糖尿病網膜症治療はますます注目されています.しかし糖尿病網膜症の治療において光凝固,手術,薬物の3つが三本柱であることは現在でも変わりません.
 光凝固はパターンスキャン方式による汎網膜光凝固が主流となり,疼痛の軽減,施行時間の短縮,通院回数の減少などの恩恵がもたらされました.ナビゲーション付きのレーザー装置も普及してきており安全で正確な治療ができるようになりました.
 硝子体手術は広角観察システムと極小切開により低侵襲で術後早期の社会復帰が可能となりました.またトリアムシノロンやブリリアントブルー Gなどのアジュバントや硝子体カッターなどの手術機器の進歩により昔は治療が難しかった重症の増殖糖尿病網膜症でも確実に視機能を温存できるようになりました.薬物治療抵抗性の糖尿病黄斑浮腫に対する網膜下灌流液注入術や,OCT付の手術顕微鏡などが最近の話題となっています.
 全身的な薬物治療としてはやはりまず血糖コントロールが重要ですが,高血圧,高脂血症に対する治療も網膜症の進行を抑制することを示す大規模臨床試験の結果も近年明らかとなりました.
 眼局所の黄斑浮腫に対する薬物治療ではVEGFに対する分子標的治療薬が複数のなかから選択可能となっています.分子生物学の進歩によりさまざまな増殖因子が糖尿病網膜症の血管病変に関係していると報告されてきましたが,これらの増殖因子のなかでもVEGFが最も重要であると考えられています.現在糖尿病黄斑浮腫に対して抗VEGF治療が主流ですが,繰り返し投与が必要であることが問題となっています.治療戦略のポイントとしてはレーザー治療と硝子体手術は術前術後の血糖コントロールが視力予後を左右するのに対し,抗VEGF薬は血糖コントロールの影響をほとんど受けないことが報告されています.すなわち血糖の高い人に糖尿病黄斑症がある場合はまず抗VEGF治療を優先して行い,血糖が落ち着いてからレーザー治療や硝子体手術に移行するといった治療戦略が考えられるようになりました.本特集ではこのような最近の糖尿病網膜症についての最新情報をお届けいたします.


鈴間 潔
(香川大学 医学部 眼科学講座 教授)

1.糖尿病網膜症の予防とスクリーニングにおける人工知能の活用への期待/川崎 良
2.分子メカニズム Molecular Mechanisms/野田航介
3.糖尿病網膜症・黄斑浮腫における眼循環動態/長岡泰司
4.OCTとOCTAにより進歩した糖尿病網膜症診療/村上智昭
5.内服治療の可能性/兼子裕規
6.レーザー/野崎実穂
7.硝子体手術/的場 亮,森實祐基
8.抗VEGF治療のエビデンス/吉田茂生,春田雅俊
9.リアルワールドの抗VEGF治療/杦本昌彦
10.眼科と内科の連携/津田祐希,中尾新太郎
11.糖尿病網膜症診療ガイドライン(第一版)2020の解説/村田敏規