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月刊糖尿病 126号
月刊糖尿病134号(Vol.13 No.6 2021)

A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-82131-2

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特集●1型糖尿病アップデート〜その成因から治療まで〜

企画編集/島田 朗

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 1型糖尿病の大部分は,膵β細胞を標的とする自己免疫疾患であり,その亜型として,劇症1型糖尿病,急性発症1型糖尿病,緩徐進行1型糖尿病がある.その遺伝背景としては,やはりHLAが最も重要であるが,近年,劇症1型糖尿病の遺伝背景について新たな知見が我が国から発信され,世界で注目されている.1型糖尿病の多くは,細胞性免疫異常によって起こると考えられているが,末梢血リンパ球を用いてのこの評価は,世界的にも確立していない.そのようななか,膵島関連抗原に対するリンパ球の反応性について,前述の3つの亜型別に検討した知見が我が国から発信されている.
 臨床現場では,膵島関連自己抗体の測定が1型糖尿病の診断に重要であるが,近年変更になった新しい自己抗体測定法の意義について新たな知見が報告されている.また,病理組織学的検討においては,劇症1型糖尿病の成因に迫る知見,また,緩徐進行1型糖尿病における膵外分泌組織の病変を含めた知見など,多くの情報発信がなされている.
 1型糖尿病の3 つの亜型のうち,劇症1型糖尿病の臨床像として発症することの多い免疫チェックポイント阻害薬関連1型糖尿病も,近年とくに重要な病態である.また,緩徐進行1型糖尿病については,前述の自己抗体測定法の変更の影響を最も受けており,その診断,そして,インスリン依存状態になる前の段階での治療介入についてはまだディベートがあるものの重要な課題である.
 治療に関しては,日本糖尿病学会でもカーボカウントを積極的に取り上げるようになり,その普及が進んできたこと,また,インスリン療法についても,次々に新しいインスリン製剤が市場に出てきたこと,さらに,低血糖対策で重要なグルカゴンについても,点鼻での投与が可能になったこと,などは特筆すべきことであろう.持続皮下インスリン注入ポンプについても,複数のメーカーが参入するようになり,連続皮下ブドウ糖濃度測定(CGM)についても,間歇的なもののみならず,リアルタイムのものも登場し,血糖コントロールは新たな時代に入ったと言える.とくに,従来HbA1cを血糖コントロールのゴールドスタンダードとしてきた状況から,目標血糖範囲内にどのくらいの割合が入るのかを示す指標,“time in range(TIR)”の概念も出てきており,今後,CGMの精度の向上とともに,血糖コントロール指標の中心となる可能性がある.そのTIRを増やす可能性が指摘されている,SGLT2阻害薬のインスリン療法との併用についても1型糖尿病治療の新しい展開である.さらに,最近では,膵島移植が保険適用となり,1型糖尿病における移植療法についても新たな展開を見せている.
 以上に加え,小児科から内科へのトランジションの問題,1型糖尿病合併妊娠の管理の問題についても重要な課題として議論されている.この特集では,成因に関する最新の知見から新規治療の展望まで,それぞれ,エキスパートの先生方にご執筆いただいており,読者の皆様の明日からの診療の一助になることを確信している.

島田 朗
(埼玉医科大学 内分泌・糖尿病内科 教授)



1. 1型糖尿病の遺伝背景/川畑由美子,池上博司
2. 1型糖尿病における細胞性免疫異常〜病態と治療法開発の可能性〜/中條大輔
3. 1型糖尿病における膵島関連自己抗体〜測定法の切り替えで明らかになったことを中心に〜/川﨑英二
4. 1型糖尿病における病理組織学的検討/小林哲郎
5. 1型糖尿病の動物モデル(ヒトとの異同)/安田尚史
6. 劇症1型糖尿病の最新知見/米田 祥,今川彰久
7. 緩徐進行1型糖尿病〜診断から治療介入まで〜/及川洋一,島田 朗
8. 1型糖尿病治療におけるカーボカウントの意義と実際/川村智行
9. 1型糖尿病合併妊娠をどう管理するか/三浦順之助
10. 1型糖尿病のインスリン頻回注射治療/松久宗英,黒田暁生
11. 1型糖尿病におけるCGM,持続皮下インスリン注入ポンプの実際/廣田勇士
12. 1型糖尿病におけるインスリン療法へのSGLT2 阻害薬併用の意義と実際/堀井剛史
13. 小児1型糖尿病の現状と今後の課題/浦上達彦
14. 1型糖尿病における膵臓移植,膵島移植の現状と課題,今後の展望/粟田卓也