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月刊糖尿病 09年11月号
月刊糖尿病11月号 SOLD OUT

2009年10月20日発売
A4変型判/128頁
価格:本体2,400円+税
ISBNコード:978-4-287-82006-3
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特集1型糖尿病のすべて -1型糖尿病の成因と病態-
編集企画/池上博司
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目次 特集 特集 特集
 1型糖尿病の臨床・研究面でわが国の果たしてきた役割はきわめて大きい.
 1型糖尿病の典型例では自己免疫機序によって膵β細胞が破壊され,インスリンの絶対的欠乏をきたして糖尿病を発症することは周知のとおりである.しかし,このような典型例とは異なる1型糖尿病,すなわち「緩徐進行1型糖尿病」や「劇症1型糖尿病」の存在が,わが国における臨床医の緻密な観察と詳細な研究によって示され,世界に向けて情報発信されている.
 疫学的に,日本人1型糖尿病の発症頻度は欧米の1/10以下と低いものと思われてきた.しかし,日本糖尿病学会「緩徐進行1型糖尿病調査研究委員会」の最近の調査結果によれば,一見2型糖尿病と思われる症例で膵島関連自己抗体をスクリーニングすると,約10 %もの高率に陽性者が見いだされている.糖尿病患者全体に占める1型糖尿病の割合は従来考えられていたよりもはるかに大きいのである.このような2型糖尿病的臨床像を示す症例の水面下で進行している膵β細胞破壊の存在を認知し,膵β細胞の温存に配慮した適切な治療を早期より構築することはきわめて重要である.なぜなら,対応によって疾患および膵β細胞の予後が大きく異なるからである.一方,劇症1型糖尿病は発症時の対応を一歩誤ると死に直結する.妊娠中の発症例も多く,この場合には2つの生命の予後が左右される.疾患の存在の周知とともに,成因・病態の解明と予防法・治療法の構築がぜひとも必要な疾患である.現在,日本糖尿病学会の委員会を中心にわが国で精力的に進められている研究の成果が期待される.
 1型糖尿病の成因解明においてわが国が果たしてきた役割も大きい.これには,わが国で見いだされ,近交系化されたモデル動物(NODマウス,KDPラット)の存在が大きく貢献している.また,遺伝子解析面でも,欧米と異なる遺伝的背景・遺伝子多型を有する日本人での研究が,欧米では見いだすことのできないブレークスルー的成果を生み出している.
 治療面では,インスリン製剤やデバイスの進歩に伴って,従来よりもはるかに良好なコントロールを達成しうる環境が整ってきた.持続皮下注入療法(CSII)や連続血糖測定装置(CGMS)の活用も進んでいる.しかし,内因性インスリンが枯渇した不安定型糖尿病のコントロールが困難であることは,今も昔も変わらない.残存膵β細胞をいかに温存するか,膵臓移植や再生医療によって膵β細胞をいかに復活させるかが重要な課題となるゆえんである.
 本号では,「1型糖尿病のすべて」と題して,1型糖尿病の疫学・成因・病態・治療,さらには1型糖尿病に合併する他の自己免疫疾患やインスリン自己免疫症候群に関して,現時点での最先端情報をまとめてお届けする.執筆者はいずれも本分野において世界をリードする方ばかりである.本特集が,1型糖尿病に興味を持つ方はもちろんのこと,1型糖尿病になじみの薄い医師やコメディカルの方々が1型糖尿病の最新情報をご理解いただくうえでお役に立てれば幸いである.
池上博司
(近畿大学 医学部 内分泌・代謝・糖尿病内科 主任教授)
[特集]1型糖尿病のすべて -1型糖尿病の成因と病態-
特集にあたって(池上博司)
1. 1型糖尿病の疫学(西村理明 他)
2. 1型糖尿病の成因:遺伝因子 HLA(川畑由美子)
3. 1型糖尿病の成因:遺伝因子 non-HLA (粟田卓也)
4. 1型糖尿病の成因:環境因子(永渕正法)
5. 自己免疫性(急性発症典型例)(島田 朗 他)
6. 緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)(小林哲朗)
7. 劇症1型糖尿病(花房俊昭 他)
8. 自己抗体と膵β細胞機能(永田正男 他)
9. 1型糖尿病の治療(総論)(丸山太郎)
10. 持続皮下インスリンCSII療法(川村智行)
11. 膵移植(松久宗英)
12. 1型糖尿病に合併する自己免疫疾患(川崎英二)
13. インスリン自己免疫症候群(内潟安子)

[連載]糖尿病検査シリーズ 企画:柏木厚典
〈第6回〉HDL-コレステロール(山下静也)