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消化器内科 第35号(Vol.5 No.1,2023)

2023年5月25日発売
A4変型判/112頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92035-0

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特集●ピロリ菌未感染胃粘膜に発生する種々の疾患

企画編集/村上和成
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 今回は「ピロリ菌未感染胃粘膜に発生する種々の疾患」についての特集です.2013年以降の除菌治療の普及とピロリ菌未感染者の急激な増加により,ピロリ菌現感染者の割合は減少し,いまやピロリ菌陽性者はマイノリティとなりつつあります.
 この序文は,2022年10月開催のJDDW2022福岡の直後に執筆中ですが,消化器病関連の学会においても,未感染胃癌や除菌後胃癌の主題は頻回に取り上げられ注目を浴びている分野です.特にピロリ菌未感染胃癌はこれまで胃癌全体の約1%でまれな疾患と報告されており,進行も遅いものが多く,腫瘍なのかどうかも議論されています.ただ,ピロリ菌陽性の胃癌とは形態や組織像が異なるものが多く,さらに今後間違いなく増加していくと考えられています.また,ピロリ菌未感染胃では,胃粘膜の萎縮がなく過酸傾向となり,PPIなどの酸分泌抑制薬も長期投与例が増加しています.それに伴いPPI投与による胃粘膜変化(PPI関連胃症)は最近,数多く報告されています.
 今回の内容を簡潔にご紹介します.
 第1章は大分大学の水上一弘先生に,今回のテーマにおいて重要なポイントであるピロリ菌未感染の定義について提案をお願いし,ピロリ菌未感染胃粘膜の特徴についてもお示しいただきました.第2章は川崎医科大学の鎌田智有先生に,PPI長期投与による胃粘膜変化とピロリ菌現感染や既感染との関連をご執筆いただきました.第3章はふるた内科クリニックの古田隆久先生に,最近注目されている自己免疫性胃炎(AIG)の診断基準の提案などを踏まえ,未感染例や除菌例が増加するにつれAIGは増加しているかどうかについて,疫学的観点からご執筆いただきました.第4章は宇治徳洲会病院の小寺 徹先生に,AIGの内視鏡所見について特殊光や拡大所見を含めてご執筆をお願いしました.第5章は藤枝市立総合病院の丸山保彦先生に,AIGに合併する胃癌についてピロリ菌感染の有無や発生部位や形態の違いなどをご執筆いただきました.第6章はKKR札幌医療センターの関 英幸先生に,ピロリ菌未感染胃に発生する胃底腺型胃癌について,その内視鏡像や組織所見,深達度診断やSM浸潤の場合の扱いなどをお願いしました.第7章は島根大学の柴垣広太郎先生に,ラズベリー様胃腫瘍について胃底腺ポリープとの異同や悪性度,治療方針などの解説をお願いしました.第8章はがん研有明病院の藤崎順子先生に,印環細胞癌について内視鏡的な特徴,範囲診断,治療方針など,ピロリ菌感染を伴う場合との違いを執筆いただきました.第9章は九州医療センターの吉村大輔先生に,未感染胃腫瘍に関して腫瘍発生部位の違いと特殊型の胃腫瘍について解説をお願いしました.第10章は新潟大学の高綱将史先生に,ピロリ菌未感染におけるFAP患者の胃癌について,治療方針を含めてご説明いただきました.第11章は松山赤十字病院の原 裕一先生に,ピロリ菌未感染の進行胃癌の特徴に関して特徴や進行に至った原因やその対策について執筆いただきました.第12章は国際医療福祉大学の石橋史明先生に,ピロリ菌未感染者の内視鏡フォローアップについて,現感染や既感染のフォローアップと対比してご解説いただきました.第13章は藤枝市立総合病院の寺井智宏先生に,いわゆる特発性潰瘍についてその特徴や治療,経過観察法,想定される病態に関してご執筆をお願いしました.
 これからの将来に向けて,いずれも内視鏡検査で遭遇する機会が多くなる疾患だと思われます.その分野に大変精通した先生方に執筆をお願いしました.大変充実した内容になり,明日からの診療に必ず役に立つものと思います.どうぞお手に取ってお楽しみください.



村上和成
大分大学医学部 消化器内科学講座 教授/大分大学医学部附属病院 副病院長



1. ピロリ菌未感染の定義と未感染胃粘膜の内視鏡的特徴/水上一弘,村上和成
2. プロトンポンプ阻害薬に関連した胃粘膜変化 ―GAPの臨床的特徴―/鎌田智有,綾木麻紀,西山典子,石井克憲,村尾高久
3. 自己免疫性胃炎は増えているのか? いかに診断するのか? どう対応すべきか?/古田隆久
4. ピロリ菌未感染自己免疫性胃炎の内視鏡診断/小寺 徹
5. 自己免疫性胃炎に合併した胃癌/丸山保彦,星野弘典
6. 胃底腺型胃癌の臨床病理学的検討/関 英幸,松薗絵美,小林良充,曽我部 進,菅井 望,鈴木 昭
7. ピロリ菌未感染胃粘膜に発生する腺窩上皮型胃腫瘍/柴垣広太郎,三代 剛,岡 明彦,荒木亜寿香,石原俊治
8. 未感染粘膜の印環細胞癌/藤崎順子,東 佑香,並河 健,高松 学
9. ピロリ菌未感染胃粘膜に生じる胃腫瘍の特徴と胃底腺領域,幽門腺領域の分化型腺癌/吉村大輔,吉村理江,水谷孝弘,原田直彦
10. 家族性大腸腺腫症患者と非家族性大腸腺腫症患者におけるピロリ菌陰性胃癌の比較検討/高綱将史,高橋一也,水野研一,竹内 学,寺井崇二
11. 未感染進行胃癌の臨床病理学的特徴/原 裕一,蔵原晃一,大城由美,池上幸治
12. 未感染胃癌の早期発見のためのスクリーニング戦略/石橋史明,鈴木 翔,平澤俊明
13. 非ピロリ菌・非薬剤性胃潰瘍(特発性胃潰瘍)の要因と内視鏡像/寺井智宏,丸山保彦
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〔特別記事〕腹部症状から遺伝性血管性浮腫(HAE)の早期診断を導くために/一般社団法人 遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(DISCOVERY) 監修:佐々木善浩