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月刊糖尿病 120号
消化器内科 第29号(Vol.4 No.4,2022)

2022年4月25日発売
A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92029-9

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特集●ピロリ菌感染症治療の問題点

企画編集/古田隆久
(浜松医科大学医学部附属病院 臨床研究センター 病院教授)
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 Helicobacter pylori(ピロリ菌)の発見から約40年以上が経過し,上部消化管疾患の概念は大変革を遂げた.この細菌を除菌することで再発を繰り返してきた消化性潰瘍の自然史が大きく変わり,胃癌の発生を減少させることも可能になってきた.除菌療法もボノプラザンの出現により,日本の除菌療法は現在の世界のトップといえる.最近では,ピロリ菌感染の診療体系はある程度完成されたようにもみえ,学会の興味は,ポストピロリとよくいわれるように,ピロリ菌陰性疾患に移行しつつある.
 しかし,実臨床に目を向けた場合には,ピロリ菌感染例は多数おり,除菌後も含めて関連する諸問題も十分に解決されたとは言いがたい.そこで,今回は,ピロリ菌感染の現状の課題を思い浮かべるままに列挙しそのまま章立てとし,役得とばかりに私が最も意見を伺いたい先生方に執筆をお願いした.
 まず,胃がん対策としてのピロリ菌対策について淳風会健康管理センターの間部克裕先生にお願いした.間部先生は,若年者対策から,成人に至るまで胃癌撲滅に対する取り組みの最前線に立つ方であり適任である.
 次に感染診断の問題点を青森県総合検診センターの下山 克先生にお願いした.下山先生はいくつかの診断法の開発に関わってもおり,豊富なデータと経験を有している.現在の感染診断のピットフォールをわかりやすく解説していただくこととした.
 胃炎の血清診断とピロリ菌の関連については広島大学総合内科・総合診療科の伊藤公訓先生にお願いした.日本で最も多くのデータを有している研究グループであり,最新の情報をお願いすることとした.
 一次除菌,二次除菌に関しては,現在の保険診療の問題点を訴えたく,私が担当することとした.
 救済療法に関しては,横浜市立大学の須江聡一郎先生にお願いした.多くの前向きの試験を実施している新進気鋭の研究者である.三次除菌や薬剤アレルギーや基礎疾患を有する場合の除菌について最新のトピックスも交えての執筆をお願いした.
 ピロリ菌除菌後の良性疾患に関して秋田大学の飯島克則先生にお願いした.除菌前後の胃酸分泌動態に関して多くの業績があり,除菌後の疾患構造の変化について食道から十二指腸までの執筆をお願いした.
 除菌後の胃悪性疾患,特に胃癌について新潟大学地域医療教育センターの八木一芳先生にお願いした.RACの提唱者であり,現在のIEEの発展に大きく寄与した方である.最新の診断学について,誌面の許す範囲でお願いした.
 薬剤による胃粘膜傷害は永遠の課題である.そこでこの分野で多くの経験を有する大阪医科大学の竹内利寿先生にピロリ菌との関連についてお願いした.
 ピロリ菌感染が減ってきて注目を浴びてきているのが自己免疫性胃炎である.ここは藤枝市立総合病院の丸山保彦先生にお願いした.ピロリ菌感染胃炎との鑑別も含めて解説してもらうこととしている.
 ピロリ菌やその除菌の腸内細菌への影響と機能性胃腸疾患との関わりについては東京医科大学の杉本光繁先生にお願いすることとした.そして,酸分泌抑制薬との関連も含めて解説してもらうこととした.
 ピロリ菌感染は全身免疫にも影響を及ぼし,特発性血小板減少性紫斑病や慢性蕁麻疹との関連はよく知られているが,それ以外についての最近の進歩はあまり聞かれてない.この分野でも多くの業績のある川崎医科大学の塩谷昭子先生にご執筆をお願いした.
 そしてピロリ菌以外のヘリコバクター属(NHPH)に関しては,この分野の第一人者の中村正彦先生にお願いした.NHPHの最新の情報を解説していただくこととした.

 以上,ピロリ菌の最先端の情報が得られる章立てとなっている.執筆者も,日本を代表するピロリ菌研究者にお願いしており,本特集を一読することで,ピロリ菌感染症の現在の問題点が理解でき,明日からのピロリ菌関連疾患の診療に大きく役立つと確信している.


古田隆久
浜松医科大学医学部附属病院 臨床研究センター 病院教授



1. ピロリ菌感染への年代別対策/間部克裕,奥田真珠美,菊地正悟,加藤元嗣,浅香正博
2. ピロリ菌感染診断Up date/下山 克
3. ピロリ菌感染症と血清ペプシノゲン,ガストリン/伊藤公訓
4. ピロリ菌の一次除菌療法,二次除菌療法の現状と問題点/古田隆久
5. ピロリ菌救済療法の現状と問題点/須江聡一郎,前田 愼
6. ピロリ菌除菌後の良性疾患/渡邊健太,飯島克則
7. 除菌後発見胃癌について/八木一芳,星 隆洋,阿部聡司,森田慎一,須田剛士,寺井崇二
8. 薬剤性胃十二指腸粘膜傷害とピロリ菌感染/竹内利寿
9. 自己免疫性胃炎とピロリ菌感染の関わりについて/丸山保彦
10. ピロリ菌感染と胃内細菌叢・腸内細菌叢/杉本光繁,新倉量太,永田尚義,河合 隆
11. 胃疾患以外のピロリ菌関連疾患の現状と理解/半田有紀子,半田 修,松本啓志,梅垣英次,塩谷昭子
12. NHPHの現状の理解/中村正彦,高橋信一,鈴木秀和