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月刊糖尿病 120号
消化器内科 第22号(Vol.3 No.9,2021)

2021年8月25日発売
A4変型判/112頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92022-0

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特集●広義の炎症性腸疾患(IBD)-重要疾患の最新知見と罹患部位による鑑別診断-

企画編集/大川清孝
(大阪市立十三市民病院 消化器内科/淀川キリスト教病院 消化器内科)
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 炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)とは,通常は潰瘍性大腸炎とクローン病をさし,元々の呼び方は特発性IBDであった.今回のテーマで使用している「IBD」は,腸に潰瘍などの病変を有するすべての炎症性疾患を含む広義のIBDとしている.「IBD」には感染性腸炎,虚血性腸炎,薬剤性腸炎,膠原病・血管炎の腸病変などの多くの疾患が含まれている.消化器内科医は聞き慣れているが,一般の内科医にはあまりなじみのない分類である.なぜなら,一般的には,感染性腸炎は感染症に分類され,アミロイドーシスや血管炎のなどの全身性疾患に合併する消化管病変は,炎症性疾患とは考えないからである.しかし,内視鏡医にとっては有用な分類であり,腸病変がある場合はこれらの疾患を鑑別すればよく,狭義のIBDである潰瘍性大腸炎やクローン病との鑑別が重要であることも,その名称から示してくれている.「IBD」には多種多様な疾患が含まれており,これらすべてを把握していないと的確な鑑別ができないため,専門でない医師には苦手な領域である.しかし,専門外の医師にとっても重要な疾患が多く含まれている.第1部では,その中で重要と思われる疾患を取り上げたので,最新の知見をupdateしていただきたい.
 急性細菌性腸炎の内視鏡像は,カンピロバクター腸炎やサルモネラ腸炎では潰瘍性大腸炎との,エルシニア腸炎ではクローン病との鑑別が問題になる.アメーバ性大腸炎とクラミジア直腸炎は代表的な性行為感染症(STD)であり,他のSTDを合併しやすいため,それらの検索が必要である.また,特殊な確定診断方法についても理解しておきたい.
 Clostridioides difficile感染症は,2019年に日本のガイドラインが発表され,腸管ベーチェット病は,2020年に出されたベーチェット病診療ガイドラインの中に腸管ベーチェット病の項目が含まれている.それらの内容は把握しておきたい.好酸球性胃腸炎については,2011年に診断指針が日本で初めて作られた.一方,好酸球性食道炎は日本で急激に増加している疾患であり,好酸球性胃腸炎との関係は興味深い.虚血性大腸炎に関しては日本のガイドラインはないが,2015年にアメリカ消化器病学会による大腸虚血のガイドラインが作られている.日本の虚血性大腸炎と比べて重症例が多く,臨床像はかなり異なっているが,内容はぜひ知っておきたい.
 薬剤性腸炎は,臨床に直結するため知識のupdateが必要である.lansoplazoleは日本でのcollagenous colitisの大部分の原因であり,NSAIDsが薬剤性の原因として最も多い欧米とは異なっている.腸間膜静脈硬化症は,多くは漢方薬が原因であることが最近日本で解明された.NSAIDs起因性腸炎は,出血以外の症状はほとんどないが,最も頻度の高い薬剤性腸炎である.高血圧の治療薬であるオルメサルタンに起因するスプルー様腸症は,最近日本でも報告がみられる.免疫チェックポイント阻害剤による免疫関連有害事象(irAE)関連大腸炎も増加しており,その臨床的特徴像や内視鏡像は把握しておきたい.
 第2部として,罹患部位による鑑別診断をとりあげた.十二指腸下行部病変で診断できる「IBD」は多いと筆者は常々感じており,IgA血管炎やアミロイドーシスなどが代表的疾患である.小腸に広範囲病変を見た場合には,いくつかの代表的な「IBD」を列挙できるようになりたい.回盲部や下部直腸は潰瘍が多くみられる部位であり,この部位に好発する疾患とその特徴的内視鏡像は知っておく必要がある.
 本特集では,第1部と第2部に分けよくばった企画になったが,熟読していただければ,明日からの日常診療に必ず役立つ内容であると自負している.


大川清孝
大阪市立十三市民病院 消化器内科/淀川キリスト教病院 消化器内科



1-1. 急性細菌性腸炎の診断と治療/堀木紀行,中川勇人
1-2. アメーバ性大腸炎とクラミジア直腸炎の診断と治療/松井佐織,松岡里紗,小野洋嗣,阿南会美
1-3. Clostridioides(Clostridium)difficile感染症の診断と治療/髙橋憲一郎
1-4. 腸管ベーチェット病の診断と治療/久松理一
1-5. 好酸球性胃腸炎の診断と治療/石原俊治,沖本英子,川島耕作,石村典久
1-6. 虚血性大腸炎の診断と治療/牟田口 真,髙林 馨,細江直樹,緒方晴彦,金井隆典
1-7. Microscopic colitisと腸間膜静脈硬化症の診断と治療/清水誠治
1-8. NSAIDs起因性腸病変の診断と治療および最近話題の薬剤性腸炎について/
蔵原晃一, 池上幸治,大城由美,河内修司,松本主之
2-1. 十二指腸内視鏡像からIBDを診断する/坂田資尚,江﨑幹宏
2-2. 小腸広範囲病変をきたすIBDの鑑別疾患/梁井俊一,松本主之
2-3. 回盲部潰瘍の鑑別診断/小林広幸,蔵原晃一
2-4. 直腸潰瘍の鑑別診断/大川清孝