HOME雑誌消化器内科 > 消化器内科第21号(Vol.3 No.8, 2021)
月刊糖尿病 120号
消化器内科 第21号(Vol.3 No.8,2021)

2021年7月26日発売
A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92021-3

全ページカラー印刷

特集●「胃炎の京都分類」と胃癌のスペクトラム

企画編集/鎌田智有
(川崎医科大学健康管理学 教授/川崎医科大学総合医療センター 総合健診センター長)
画像をクリックするとサンプルをご覧いただけます
目次[PDF 特集[PDF 特集[PDF 特集[PDF
 本特集号のタイトルは“「胃炎の京都分類」と胃癌のスペクトラム”とさせていただきました.Helicobacter pylori(ピロリ菌)感染状態(未感染・現感染・既感染)により,発生する胃癌の臨床病理学的特徴が異なることがこれまでに報告されています.近年の,ピロリ菌感染率の低下および除菌治療の普及に伴い,現在はピロリ菌陰性時代とも言われています.よって,現感染粘膜から発生する胃癌のみならず,増加傾向にある除菌後粘膜から発生する胃癌も含め,内視鏡所見からみたそのリスクを熟知しておく必要があります.そこで「胃炎の京都分類」がそのバイブルになればと考えたことから,本特集号を作成させていただきました.
 ピロリ菌感染と胃癌との関連については古くから疫学的研究に始まり,スナネズミなどを用いた実験動物における胃癌の発生,ヒトにおけるピロリ菌感染群からの胃癌発生の前向き研究および除菌介入試験による胃癌発生の予防効果などの,多くの研究結果が報告されています.なかでも,本誌編集顧問の上村直実先生が2001年にThe New England Journal of Medicine誌に発表された前向き研究論文が,これ以降のピロリ菌感染と胃癌研究に大きなインパクトを与えたことは明白です.
 本号にご執筆をいただきました春間 賢先生監修のもと,2014年に発表された「胃炎の京都分類」は,ピロリ菌感染を未感染,現感染および既感染(除菌後を含む)に分類し,内視鏡診療にて経験する主な所見を総合的に考慮し,胃癌の発生リスクを評価する分類です.春間先生には「胃炎の京都分類」の作成までの経緯とこれからについて,多方面からご執筆いただきました.現在,「胃炎の京都分類」は大学病院,基幹病院やクリニック等における内視鏡診療のみならず,2016年度から全国の自治体で普及しつつある胃内視鏡検診の場においても広く用いられています.ご執筆の先生方にはそれぞれの立場からこの「胃炎の京都分類」を実際どのように運用・活用しているのか,その内視鏡診療の現況について読者の方々にも理解していただけるように取り上げてみました.
 現感染胃癌のリスクとして考えられる内視鏡所見は,分化型として萎縮性胃炎,腸上皮化生,黄色腫,そして未分化型として鳥肌胃炎および過形成性胃炎が挙げられています.総論として杉本光繁先生と豊島 治先生にはそれぞれ大学病院,内視鏡クリニックの立場から胃癌リスク評価などについて,各論として増山仁徳先生には萎縮性胃炎,川村昌司先生には腸上皮化生,北村晋志先生には黄色腫と分化型胃癌リスクについてご担当をいただき,最新知見も含めてわかりやくご解説をいただきました.西川 泉先生には鳥肌胃炎,渡邉実香先生には過形成性胃炎と未分化型胃癌リスクについて,自験データも交えてご解説をいただきました.現在,特に学会などにもよく取り上げられている除菌後胃癌のリスクについては平田喜裕先生と森畠康策先生にご解説いただきました.
 近年,内視鏡検査または胃がんリスク層別化検査を契機に増加傾向にある自己免疫性胃炎については,その胃癌リスクとこれに合併する胃癌の特徴などを原 裕一先生に多数例のご経験からご解説いただきました.最後に,近年では人工知能(AI)を用いた胃炎・胃癌診断の有用性が報告されており,その最新知見については並河 健先生にご解説いただきました.
 本特集号は,このように「胃炎の京都分類」からみた胃癌リスクを凝縮した1冊になります.公衆衛生学的な危機の直面にある現在ですが,多忙な実地医療の場においても「胃炎の京都分類」を是非ともご評価していただきたいと思います.


鎌田智有
川崎医科大学健康管理学 教授/川崎医科大学総合医療センター 総合健診センター長
1. 「胃炎の京都分類」作成の経緯とこれから/春間 賢
2-1. 「胃炎の京都分類」による胃癌リスク評価とその有用性–大学病院の立場から–/杉本光繁,永田尚義,岩田英里,河合 隆
2-2. 「胃炎の京都分類」による胃癌リスク評価とその有用性–内視鏡クリニックの立場から–/豊島 治,西澤俊宏,吉田俊太郎,鈴木秀和
3. 胃粘膜萎縮と胃癌リスクは正の相関関係にある.早期十二指腸癌の背景胃粘膜萎縮は?/増山仁徳,郷田憲一,中村哲也,富永圭一,倉科憲太郎,砂田圭二郞,増山胃腸科クリニック
4. 腸上皮化生と胃癌リスク/川村昌司
5. 黄色腫と胃癌リスク/北村晋志
6. 鳥肌胃炎と胃癌リスク/西川 泉,寺杣智志,玉置秀彦,松谷泰好,深海三恵,東 克彦
7. 皺襞腫大型胃炎と胃癌リスク/渡邉実香,前北隆雄,一瀬雅夫,北野雅之
8-1. 除菌後胃癌のリスク因子–萎縮・腸上皮化生–/平田喜裕
8-2. 除菌後胃癌のリスク–地図状発赤–/森畠康策
9. 自己免疫性胃炎と胃癌リスク,合併胃癌の臨床病理学的特徴/原 裕一,蔵原晃一,大城由美,池上幸治
10. 胃癌診断における人工知能(AI)の有用性/並河 健,平澤俊明
訂正文
『消化器内科』第21号(Vol.3 No.8, 2021)において,以下の箇所に誤りがありましたので,お詫びして訂正いたします。

・85ページ「図4 残存胃底腺粘膜」
 (誤)

 (正)


PDFはこちら
皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。