HOME看護セミナー >新生児蘇生と蘇生後のケアの看護のポイント
 正期産児において85%の児は生後30秒以内に第1呼吸が発現する。すなわち15%の児は蘇生の初期処置を含む何らかの処置を必要とする。厚生労働省から発表された人口動態総覧による2018年度の出生数の推計は921,000人で過去最低であるが15%の児が何らかの蘇生を受け5%の児はマスクとバッグによる人工呼吸を必要とするのでるとすれば年間約50,000人の児がマスクとバッグによる蘇生を必要とすることになり決して少ない数ではなく年間400分娩を取り扱う施設20件はマスクとバッグ以上の蘇生を必要とする分娩に遭遇することになる。成人の心停止は心筋梗塞にともなう不整脈や外傷による出血による心停止であるため薬物投与や高度な救命医療が必要である。一方、新生児は低酸素及び虚血による心停止であるためマスクとバッグにより人工呼吸が最も重要な手技で有り胸骨圧迫まで加われば多くの児の救命は可能である。胎児心拍数モニタリング等の周産期医療の進歩によってハイリスク分娩やハイリスク新生児の出生が予知された場合は周産期センターに母体搬送され小児科医が分娩に立ち会うシステムが確立しつつあるがすべてのハイリスク児の出生予知は不可能であり、まったく順調な妊娠経過であっても子宮外適応障害が突然出現することも稀ではない。我が国の分娩の半数は常時小児科医が分娩に立ち会えない産科診療所が半数を占めていることから分娩に立ち会う産科医師、特に助産師および看護師の皆様方が標準的な新生児蘇生法の理論と技術を身につけてこくことが極めて重要である。日本周産期・新生児医学会公認の講習会がこの目的のために開催されているが、チーム医療の観点から医師、看護師、助産師等の混成のメンバーで講習会を開催している。本セミナーでは受講者を看護師および助産師であることからより蘇生技術の知識・技能の修得に留まらず蘇生に反応せず高次医療機関に搬送が必要な場合、看護の視点から安全に搬送するためのポイント、および状態が改善した児のその後の看護のポイントについても本セミナーで取り扱うので是非ご参加いただきたい。


細野茂春 先生
自治医科大学附属さいたま医療センター
周産期科 新生児部門教授者
【講師からのメッセージ】
分娩時自分が蘇生のリーダに指名されても蘇生の経験が少ないといざ自発呼吸が認められなかった場合、自信をもってみずから判断して蘇生を行うことは難しいのが現状だと思います。またマスクをバッグを行っても状態が改善しない場合自身の手技の問題なのか児の問題なのか判断に苦慮することも多いと思います。どういった点をチェックしてどのように修正していくかを明快に解説していきます。日本版救急ガイドライン2015に基づいた新生児蘇生法テキストには書かれているが蘇生講習会ではあまり触れられていない蘇生後のケアのポイントと高次医療機関への搬送の判断と搬送中の看護のポイントについて詳細に解説する。

【本セミナーの目標】
1. 蘇生が必要か判断して最新のアルゴリズムに沿って評価と手技を実施できる
2. 搬送が必要な児の判断と安全に患児を搬送できる
3. 蘇生後の児の観察ポイントと必要な看護技術を身につける

Program(10:00〜16:30)
1. オリエンテーション
2. 周産期医療の現状と新生児仮死の病態生理 ・新生児蘇生のために知っておきたい周産期医療統計 ・なぜ新生児蘇生法を学ぶのか ・Apgarスコアを理解する ・新生児仮死の病態生理
3. アルゴリズム2015に沿った新生児蘇生法を理解する1 ・蘇生の判断 ・蘇生の初期処置とルーチンケア ・救命の流れと安定化の流れ ・人工呼吸 ・人工呼吸と胸骨圧迫の連動
4. アルゴリズム2015に沿った新生児蘇生法を理解する2 ・薬剤投与 ・安定化の流れを理解する ・早産児の蘇生
5. 蘇生後のケアの注意点 ・体温管理 ・血糖管理 ・パルスオキシメータの活用 ・新生児蘇生に関わるその他の推奨
6. 低体温療法の適応と新生児搬送の看護 ・臍帯血血液ガス分析および生後の血液ガス分析の読み方 ・低体温療法の適応 ・新生児搬送の適応と搬送中の看護のポイント ・新生児蘇生のトレーニング
7. 質疑応答

特記事項 日本版救急ガイドライン2015に基づいた新生児蘇生法テキスト(メジカルビュー社)による事前学習が望ましい

※上記内容・進行予定は,変更する場合があります。