HOME看護セミナー > 院内感染はどうして起こるの?〜感染症対策のポイント〜
 1996年に米国疾病管理予防センター(centers for disease control and prevention;CDC)が隔離予防策ガイドラインを公開し,そこで標準予防策が紹介されました。そして,標準予防策が日本の医療機関に導入されて以降,日本の感染対策は飛躍的に進化したのです。既に,CDCは数百ものガイドラインを公開しており,それには手指衛生,血液体液曝露対策,インフルエンザ対策,ノロウイルス対策,結核対策など,院内感染対策全域について記載されています。本セミナーではCDCガイドラインに基づいた感染対策について解説していきます。
標準予防策・感染経路別予防策
 標準予防策は感染対策の基本です。本セミナーでは標準予防策・感染経路別予防策の考え方を解説するとともに,手指衛生や環境表面への対策についても解説します。手指衛生についてはWHO(世界保健機関)ガイドラインに記載されている「手指衛生すべき5つのタイミング」も紹介する予定です。
ワクチン
 HBVワクチンやインフルエンザワクチンは医療従事者には必須のワクチンですが,麻疹・風疹・ムンプス・水痘ワクチンも接種すべきです。本セミナーでは,その重要性についてお話しします。また,接種しても抗体を確保できない場合や,接種後の年月の経過によって抗体価が低下したときの対応についても解説します。
血液・体液曝露対策
 病棟業務において針刺し切創が発生することがあります。この場合,曝露源の患者さんがHBV,HCV,HIVに感染していた場合には適切な対応を迅速に実施しなければなりません。そのときの対応について詳細に解説します。
インフルエンザウイルス・ノロウイルス対策
 冬季になると医療施設ではインフルエンザウイルスやノロウイルスが猛威を振るい,入院患者さんや外来患者さんのみならず,医療従事者も感染することがあります。そして,施設内で集団感染が発生すれば甚大な被害をうけることになります。これらの感染症の予防策や発生時の対策についてお話しします。
結核
 肺炎と思っていた入院患者さんが実は結核であったということはよく経験することです。その結果,医療従事者や同室者が結核に曝露することがあります。結核の曝露対策や曝露後対策について解説します。
手術部位感染
 手術部位感染(SSI)の予防は院内感染では重要な対策です。これまでCDCや様々な学会がSSIガイドラインを公開してきました。各ガイドラインの比較をすることによって,SSIの予防法の理解を深めるようにします。

矢野邦夫 先生
浜松医療センター感染症内科長・副院長
1981年3月 名古屋大学医学部 卒業。1981年4月 名古屋掖済会(エキサイカイ)病院,1987年7月 名古屋第2赤十字病院,1988年7月 名古屋大学第一内科,1989年12月 米国フレッドハッチンソン癌研究所,1993年4月 浜松医療センター血液科,1996年7月 米国ワシントン州立大学感染症科(エイズ臨床短期留学),米国エイズトレーニングセンター臨床研修終了,1997年4月より浜松医療センター感染症内科長,2008年7月より同センター副院長。
医学博士,ICD,感染症専門医・指導医,血液専門医,輸血専門医,内科認定医,抗菌化学療法指導医,浜松医科大学臨床教授。
著書:感染対策のレシピ(リーダムハウス)他
【講師からのメッセージ】
 1996年以降,日本の医療機関の感染対策は飛躍的に向上しました。実際,結核,インフルエンザ,ノロウイルス,環境制御,血管内カテーテル,尿道留置カテーテルなどの感染対策は大きく進化しています。これらの進化の過程において,かつては常識であり当然実施すべきであろうと信じられていた対策が中止されたり,過去には気にしていなかったことが感染対策上重要であることに気づかされた,といったことを少なからず経験しました。このような変化にはCDCのガイドラインが大きく影響したことは誰もが知るところです。
 CDCはまた,現在もなおガイドラインを公開しつづけています。それらはお互いに矛盾することなく,科学的であり,エビデンスに基づいたものとなっています。さらに,経済性が考慮されてマンパワーの節約も念頭においた勧告がなされています。
 本セミナーではCDCガイドラインのなかで手洗い,環境制御,HBVワクチン,インフルエンザなど,特に重要と思われる感染対策を解説します。よく,「感染対策は難しい!」という声を聞くことがありますが,その基本や考え方を理解すると,応用ができるようになります。講義では楽しいお話しができればと思っています。

10:00〜10:05
オリエンテーション
10:05〜10:50

標準予防策・感染経路別予防策
・標準予防策(手指衛生・環境対策を含む)
・感染経路別予防策
11:00〜11:50
ワクチン
・インフルエンザワクチン
・麻疹・風疹・ムンプス・水痘ワクチン
12:00〜12:50
血液・体液曝露対策
・曝露直後の対応
・HBVの曝露後対策
・HCVの曝露後対策
・HIVの曝露後対策
- 昼食(60分) -
13:50〜14:30
インフルエンザ対策とノロウイルス対策
・インフルエンザ対策(インフルエンザについて,院内発生時の対応)
・ノロウイルス対策(ノロウイルスについて,院内発生時の対応)
14:40〜15:20
結核対策
・結核菌について
・結核の曝露予防策
・結核の曝露後対策
15:30〜16:10
手術部位感染対策
・CDC および各学会のガイドラインについて
・予防抗菌薬
・血糖コントロール
・皮膚消毒
16:10〜16:30
質疑応答・まとめ

※上記内容・進行予定は,変更する場合があります。
循環器ナーシング
15年3月号