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レジデント12月号
AB判104頁
価格:本体¥2,000+税
ISBNコード:978-4-287-81111-5
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特集循環器治療薬
企画編集/木原康樹・西楽顕典
 わずか20年ほど前まではβ遮断薬は心不全患者には禁忌であった.しかし,それは今や心不全治療になくてはならない治療薬となった.低用量アスピリンが本邦で虚血性心疾患の治療に用いられるようなったのは,つい17年前のことである.このbreakthroughにより多くの命が救われた.Direct oral anticoagulantがワーファリンにとってかわろうとしている昨今であるが,経口抗凝固薬療法中の患者が納豆を食べることができる時代を10年前に誰が想像したであろうか? このように,過去20年にわたる循環器領域の治療薬の発展には目を見張るものがある.しかしながら,高齢者人口の急増に伴い,循環器疾患を持つ患者人口は増加の一途である.さらに,このことも手伝って,心疾患は依然として日本の死亡原因の第2位である.したがって,すべての臨床医が循環器疾患の基本的な薬物療法についての知識を備え,またそれをup to dateすることが望まれる.
 循環器疾患の特徴の1つは,病態がダイナミックに変化することである.起坐呼吸で会話もままならない心不全患者が,わずか2週間の治療の後に独歩で退院していく姿をみるのは循環器診療の醍醐味である.その一方で,治療の方法やタイミングを誤れば,患者が短時間に不幸な転機をとることもまれではない.このことから,経験に乏しい若い医師にとっては,循環器領域は最も尻込みさせられる診療分野の1つであるかもしれない.このような医師の要望に応えるために,本特集は企画された.
 循環器領域の主要な9種の薬剤について,各分野のエキスパートの先生方にご執筆頂いた.
 各章において,図表を豊富に用いて,わかりやすく作用機序を解説した.Landmarkとなる大規模臨床試験やガイドラインの紹介により,evidence based medicineに対応した.これらにより,成書にも引けをとらない内容となっていると自負している.本特集の最大の特徴として,実際の処方例とその解説を加えた.ベッドサイドに本書を持参することで,明日からの循環器診療の即戦力となりうるであろう.各章はエキスパートの先生方の豊富な経験にもとづいたtip&trickで締めくくられている.かつては上級医から口頭で伝えられてきた宝珠の知識がそこにあるかもしれない.読みものとしても面白い内容となっている.本特集が希望に燃える若い医師にとって,循環器臨床の一助となれば編者として幸いである.
木原康樹
(広島大学大学院 医歯薬保健学科研究科 循環器内科学 教授)
西楽顕典
(広島大学大学院 医歯薬保健学科研究科 循環器内科学 助教)
特集循環器治療薬
1. レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬/小林久也・河野 健・苅尾七臣
2. β遮断薬/柳原清孝・山本一博
3. 利尿薬/牛島龍一・絹川弘一郎
4. 脂質異常症治療薬/坂本憲治・辻田賢一
5. 抗不整脈薬/鈴木 敦・志賀 剛
6. 抗血小板剤/後藤信哉
7. 抗凝固薬/有田卓人・山下武志
8. 冠拡張薬/高橋 潤・下川宏明
9. 循環器救急薬剤/香川英介

連載
◆ヨルレジ……編集/森 信好
 ・第9回 頻拍……望月宏樹
◆患者さんとの接し方
 ・第106話 あなたの得意分野は? −「今日は休診日ですよ」……星野達夫
◆慶應循環器内科カンファレンス……監修/福田恵一
 ・第64回 青壮年男性の心原性失神の一例……家田真樹