皮膚科では,皮膚の色調が異なっていることが主訴となる病態があり,皮膚色が常色ではない色調を示していること,周辺の皮膚と異なる色の状態になっていることを一般的にアザと呼びます.青色,赤色,茶色,黒色,白色など皮膚色が皮膚常色と異なっている状態はさまざまで,いろいろなアザがあります.アザについては迷信もあり,まったく根拠のないことでアザのある人が中傷され,患者さんやその家族が心を痛めたりする事例も多く,皮膚アザは他人に見える病気であることから,アザをもつ患者さんにとっては容姿にかかわることであり,病気によるQOL(quality of life)の低下が大きな問題でした.近年,皮膚美容が社会の大きな関心事であることを考えると,アザの治療は患者さんのQOLを改善するためにとても重要な問題といえます.現在は一部のアザについては遺伝学的な解析が進み,原因がわかってきた疾患もあります.また外科手術療法,レーザー治療,紫外線治療などさまざまな治療法が開発され,アザの種類,大きさ,部位によって治療が選択されるようになってきています.また治療法がない,治療ができないアザについては,病変の色調をメイクでカバーするメディカルメイクによって,患者さんのQOLを高め,社会活動を推進する方法も行われています. 今回は,まさに皮膚の美容を考える『BEAUTY』という雑誌にふさわしい企画特集として,さまざまな皮膚アザを取り上げました.1章.太田母斑と伊藤母斑,2章.後天性真皮メラノサイトーシス,3章.蒙古斑と異所性蒙古斑,青色母斑,4章.色素性母斑,5章.表皮母斑,6章.扁平母斑とベッカー母斑,7章.乳児血管腫,8章.毛細血管奇形,9章.脱色素性母斑と尋常性白斑について,それぞれエキスパートにアザの病態と治療法の解説を行っていただいております.また10章.メディカルメイクアップについても,その手法や効果について解説していただきました.これらの情報が,日々多数の患者さんを診療し,皮膚美容に関心のある先生方の一助となれば幸甚です.